せどりのリサーチはなぜ難しいのか|「◯%OFF」は相場ではない
せどりを始めた人が最初につまずくのは、仕入れる場所でも売る場所でもなく、その手前の「どれを仕入れるか」を決める段階です。そしてこの段階が難しい理由は、努力や慣れの問題ではなく、判断に必要なデータが簡単には手に入らないという構造にあります。この記事では、その構造を具体的に整理します。
1. 詰まるのは「仕入れ」ではなく「リサーチ」
せどりの説明はたいてい「安く買って高く売る」で終わります。ところが実際にやってみると、安く買う場所を見つけることも、売る場所を用意することも、そこまで難しくありません。セール品はいくらでも見つかりますし、フリマアプリの出品も数分で終わります。
本当に難しいのは、その間にある「これは仕入れていい商品か」という判断です。この判断を間違えると、安く買えたはずの商品が売れ残り、現金が在庫に化けたまま戻ってこなくなります。
2. 「◯%OFF」は相場ではない
商品ページでよく見かける「70%OFF」「半額」といった表示は、その店が示した「通常価格」や「参考価格」に対する割引率です。つまり、比較対象の価格を決めているのは売り手側です。
そのため、値引き率が大きいことは「安い」ことを意味しません。もともと高めの価格を掲げてから割り引けば、割引率はいくらでも大きく見せられます。
なお、実際には販売されていなかった価格を比較対象にするような表示は、景品表示法で問題になり得るものとして消費者庁が考え方を示しています。制度上の線引きはありますが、買う側から見れば「表示された割引率は判断材料にならない」と考えておくのが安全です。
3. 本当に必要なのは「実際に売れた価格」
仕入れの判断に必要な数字は、値引き率でも定価でもありません。次の3つです。
- ✓実際にいくらで売れているか(成約価格。出品価格ではない)
- ✓どのくらいの頻度で売れているか(回転の速さ)
- ✓同じ商品を何人が売っているか(価格競争の激しさ)
4. その数字が自動で集まらない理由
この3つの数字は、実は簡単には集められません。主要なサービスの状況を整理すると、次のようになります。
- ✓フリマアプリの成約価格:一般に公開されたAPIは用意されておらず、利用規約でプログラムによる自動収集が禁止されていることが多い
- ✓ネットオークションの落札相場:かつて提供されていた開発者向けの取得手段は、現在は一般に開かれていない
- ✓大手通販サイトの価格推移:専用の有料サービスを使えば取得できるが、月額の費用がかかる
- ✓通販サイトの公式API:利用にあたって審査や、一定の販売実績が求められる場合がある
5. だから「ツールで全自動」は成立しない
セール中の商品を集めるところまでは、公開されている情報で自動化できます。安く売られている商品のリストを作ることは難しくありません。
しかし「それがいくらで売れるのか」を確かめる部分は、自動化の外に残ります。結果として、候補を1つずつフリマアプリで検索し、売り切れの価格を目で見て確かめる作業が必要になります。1商品あたり1分だとしても、100商品なら100分です。
「ツールを使えば楽に稼げる」という説明を見かけたら、その道具がどの部分を自動化しているのかを確認してください。多くの場合、自動化されているのは候補を集めるところまでで、判断の部分は手作業として残ります。
6. 現実的に取り組むなら
この構造を前提にすると、進め方は次のようになります。
- ✓まず自宅の不用品を売って、出品・梱包・発送に何分かかるかを実測する
- ✓扱うカテゴリーを1つに絞る(相場が頭に入るまでの時間が短くなる)
- ✓候補を集めるところだけ効率化し、相場の確認は手作業と割り切る
- ✓1商品あたりの利益ではなく、確認・梱包・発送を含めた時間で割った時給で判断する
- ✓中古品を継続的に仕入れて売る場合は、古物商の許可が必要になる。申請から交付まで日数がかかるため、事前に警察署へ確認する
7. リサーチの前に、そもそも必要になるもの
リサーチの難しさとは別に、始める前から必要になるものがあります。広告や体験談では省かれがちですが、ここを含めて計算しないと数字が合いません。
- ✓運転資金:販売手数料・送料・梱包材を引くと、手元に残るのは売価の1〜2割程度になることが多い。仮に月5万円の利益を目標にすると、売上はその5〜10倍が必要で、仕入れは先払い・回収は後になるため、常に30万円前後の資金が動いていることになる
- ✓在庫リスク:売れなければ、その現金は商品のまま戻ってこない。値下げして処分すれば損失が確定する
- ✓作業時間:検品・撮影・出品・梱包・発送で1件あたり10〜15分。月に30〜100件動かすなら、毎日30〜60分を確保し続ける必要がある
- ✓古物商許可:中古品を継続的に仕入れて売るには許可が必要。申請手数料は19,000円で、審査に40日程度かかるのが一般的。つまり中古せどりは「今日始めて今月入金」という形にはならない
- ✓参入のしやすさ:始めるのに資格も技術も要らない、という長所はそのまま短所になる。同じ商品を見つけた人が同じ場所に出品するため、価格競争になりやすい
8. 知らずに始めるとどうなるか
この構造を知らないまま始めると、「割引率が大きい商品」を仕入れてしまいがちです。そして売れ残ってから、仕入れ判断の材料が足りていなかったことに気づきます。
紹介される数字はたいてい「うまくいった場合」です。うまくいかなかった場合の在庫や、確認にかかった時間は、記事にも広告にも出てきません。判断するときは、成功例の金額ではなく、ここまでに挙げた前提条件のほうを見てください。
せどりが向いていないという話ではありません。判断に必要なデータが有料か手作業でしか得られず、資金・時間・許可という前提もある、というだけです。その全部を含めて時給を計算し、それでも見合うと思えるかどうかで決めるのが確実です。
本記事は一般的な情報の整理であり、特定の手法や事業者を推奨するものではありません。各サービスの規約や制度は変わることがあるため、実際に取り組む際は最新の公式情報をご確認ください。
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