副業で社会保険はどうなる?|合算されるもの・されないものと2026年10月の変更
副業と社会保険の話がややこしいのは、制度ごとに「2か所を合算するかどうか」が違うからです。合算するものと、しないものを先に分けてしまえば、自分がどれに当たるかは十分に判断できます。あわせて、2026年10月に予定されている加入条件の変更まで整理しました。(最終的な判断は年金事務所や勤務先にご確認ください)
1. 「増えるか」ではなく「合算されるか」で決まります
副業で社会保険がどうなるかは、次の4つを分けて考えると整理できます。同じ「社会保険」という言葉でも、合算するものとしないものが混在しています。
- ✓厚生年金・健康保険の保険料 → 2か所とも加入したときだけ合算します
- ✓加入するかどうかを決める労働時間 → 合算しません
- ✓労災保険の給付額 → 合算します(2020年9月から)
- ✓雇用保険 → 原則1か所のみ。65歳以上だけ合算の特例があります
2. 副業が業務委託なら、天引きは増えません
厚生年金と健康保険の保険料は「標準報酬月額」をもとに決まります。その元になるのは、雇用契約にもとづいて支払われる報酬です。業務委託の報酬はここに入りません。
つまり、会社員として働きながら業務委託で年100万円を稼いでも、給与から引かれる社会保険料そのものは変わりません。増えるのは所得税と住民税のほうです。
ただし、会社に雇われておらず業務委託だけで働いている場合は話が別で、国民健康保険と国民年金になります。国民健康保険の保険料は前年の所得で決まるため、稼いだ年ではなく翌年に上がります。初めて大きく稼いだ年の翌年に慌てないよう、ここは覚えておいてください。
3. 副業も「雇用」のとき、加入するかどうかの線
副業先でパートやアルバイトとして雇われる場合、その勤務先の労働時間などで加入するかどうかが決まります。目安は2つです。
1つは、週の所定労働時間がその会社のフルタイムの4分の3以上(多くの会社で週30時間以上)であること。この場合は無条件で加入します。
もう1つは、それ未満でも次の条件を全部満たす場合です(短時間労働者への適用拡大)。
- ✓週の所定労働時間が20時間以上
- ✓月額賃金が8.8万円以上(賞与・残業代・通勤手当は含めません)
- ✓2か月を超えて雇用される見込みがある
- ✓学生ではない
- ✓勤務先の厚生年金被保険者が51人以上(2024年10月から)
4. 誤解が一番多い点:労働時間は合算しません
「本業で週35時間、副業で週10時間だから、合計45時間で加入するのでは」という質問がよくありますが、そうはなりません。加入するかどうかは、勤務先ごとに、その勤務先での労働時間だけで判断します。
そのため、本業で週35時間、副業で週10時間という働き方の場合、副業先では社会保険に加入しません。加入するのは本業の1か所だけで、保険料の計算も本業の給与だけで行われます。
逆に、副業先でも週20時間以上働き、他の条件も満たすと、2か所とも加入することになります。そのときに必要な手続きが、5章の届出です。
5. 2026年10月から、この線が動きます
2025年6月13日に成立した年金制度改正法により、3章の条件のうち「月額賃金8.8万円以上」という賃金要件が撤廃されます。いわゆる106万円の壁がなくなる、と報じられているものです。2026年10月からの予定です。
撤廃されると、短時間労働者の判定は実質的に「週20時間以上かどうか」だけになります。企業規模の要件も、次のように段階的に縮小される予定です。
- ✓2027年10月:厚生年金被保険者36人以上の企業
- ✓2029年10月:21人以上の企業
- ✓2032年10月:11人以上の企業
- ✓2035年10月:企業規模の要件は撤廃
6. 副業する人にとって、10月の変更は何を意味するか
これまでは「週20時間は超えるけれど、月8.8万円は超えないように」という調整が成り立ちました。時給が低いほど、この隙間は広くとれました。
賃金要件がなくなると、この調整は使えなくなります。判定が時間だけになるため、副業先のシフトを週19時間台に収めるか、加入して見返りを取るかの二択に近づきます。時給が上がっても加入から逃れられる幅が広がらない、という点が今までとの違いです。
なお、施行日や細かい取り扱いは政令などで定められます。9月以降に勤務先から届く案内を必ず確認してください。
7. 2か所とも加入したときの手続き
2か所以上で社会保険の加入対象になったときは、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出します。この届出には、見落としやすい点が3つあります。
- ✓提出するのは会社ではなく、被保険者本人です
- ✓期限は、事実が発生してから10日以内です
- ✓主たる事業所(選択事業所)を1つ選び、その所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所に出します
8. 保険料は合算してから按分されます
2か所分の報酬月額をいったん合計し、その合計額で標準報酬月額を決めます。そのうえで、決まった保険料を各勤務先の報酬の割合で按分します。両方でそれぞれ満額を取られるわけではありません。
この届出を出さないままだと保険料を正しく納められず、片方だけ加入した状態が続くと、さかのぼって追徴が発生することがあります。10日以内という期限は短いので、副業先で加入対象になりそうだと分かった時点で準備しておくと安心です。
あわせて知っておきたいのが、決定した内容の通知は両方の勤務先に届くという点です。雇用される副業を選ぶと、この経路で本業側に副業の存在が伝わります。会社に知られたくない事情がある場合、業務委託の副業とは条件が違うことになります。
9. 労災と雇用保険は、また扱いが違います
労災保険は2020年9月1日から、複数の会社で働く人については、各社の賃金を合算して給付基礎日額を計算するようになりました。それ以前は事故が起きた会社の賃金だけで計算していたため、副業先で軽い時給の仕事中にけがをすると、休業補償が実態とかけ離れて低くなっていました。今は合算されます。
雇用保険は原則として、主たる勤務先1か所だけの加入です。ただし65歳以上には例外があり、雇用保険マルチジョブホルダー制度(2022年1月1日から)により、2つの事業所(いずれも週5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して週20時間以上になる場合、本人がハローワークに申し出ることで加入できます。3か所以上で働いていても、合算できるのは2つまでです。
10. 増えた保険料に対して、返ってくるもの
加入すると保険料は増えますが、負担だけではありません。健康保険には傷病手当金と出産手当金があり、国民健康保険にはこれらがありません。病気やけがで働けない期間に給与のおよそ3分の2が支給される仕組みは、副業を含めて働き続けるうえで意味があります。
厚生年金も、加入期間と報酬に応じて将来受け取る額が増えます。保険料は勤務先と折半です。手取りが減るのは事実なので、そのうえで、あと何年働くのかという時間の長さと見比べて判断してください。
11. 130万円の壁とは別の話です
月8.8万円(年約106万円)は、自分自身が勤務先で社会保険に加入する条件の話です。一方の130万円は、家族の扶養から外れるかどうかの話で、別の制度です。
扶養の判定は勤務先の従業員数に関係なく、これから1年間の見込み収入で行われます。業務委託の収入もここでは考慮されます。2026年10月に変わるのは前者であり、130万円の扶養の基準がなくなるわけではありません。
12. 自分がどれに当たるか、3つの質問
ここまでを、自分の状況に当てはめる質問にすると次の3つです。
- ✓副業は業務委託ですか、それとも雇用ですか(業務委託なら、天引きは変わりません)
- ✓雇用なら、その副業先で週20時間以上働きますか(20時間未満なら、加入対象になりません)
- ✓その副業先の厚生年金被保険者は51人以上ですか(2027年10月以降、この人数は下がっていきます)
参考にした資料
日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」(届出の名称・10日以内・合算と按分)
厚生労働省「年収の壁への対応」(賃金要件の撤廃と企業規模要件の段階的な縮小)
厚生労働省「複数事業労働者への労災保険給付 わかりやすい解説」(2020年9月1日施行)
厚生労働省・ハローワーク「雇用保険マルチジョブホルダー制度」(2022年1月1日施行)
2026年10月の賃金要件撤廃は、2025年6月13日成立の年金制度改正法にもとづく予定です。施行日や細目は政令等で定められるため、実際の適用は勤務先からの案内でご確認ください。
加入するかどうかは、副業先での労働時間で決まります。まずは副業に使っている時間と収入を記録して、自分がどの線の内側にいるかを見えるようにしておきましょう。
副業日記で記録を始める※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の商品・サービスを評価・推奨するものではありません。最終的な判断はご自身の責任で行ってください。